昨年の12月13日に証券取引法の企業情報開示に関する内閣府令等(証券取引法施行令の一部を改正する政令および発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令)が改正されまして、MBO等(経営者や親会社が関与するTOBにより、株式非公開化を図る制度)において公開買付けを行おうとする者は、買付届出書の添付書類として第三者作成にかかる株価算定書が要求されることとなりました。

株価算定評価書の開示について – ビジネス法務の部屋

あ、いつの間にかそんなことになってたの。

TOB実務に携わっている方はもうご存知でしょうが、昨年12月よりTOBを実施するに当たり、MBOの場合と、親子間の場合は、第三者の株式算定書を入手していれば、その報告書を開示することになっております。
これは株式評価に携わっていた人間としては大ニュースでした。
だって、他社の株式算定書が堂々と、見れるんですから!

MBO等における第三者による株式算定書の開示(前編)– M&A会計士がゆく

うんうん、そうでつね。という訳で、折角だからM&A会計士さんが列挙した7銘柄のうち一番情報が充実していそうな②旭ダンケの株式価値算定書(野村證券が㈱AD企画に提出したもの)を見てみたのだが…。

殆ど情報がない。

結論しか書いてないので、算定・評価をしたようなふりしてその実エンピツ舐め舐めでテケトーな数字を書き込んだとしても、ハッキリ言って提出された方には分からない(もちろん野村はちゃんと計算したであろうが)。従って何の参考にもお勉強にもならない。

「市場価値平均法による算定結果」は、エラソーな名前が付いてはいるが、過去1ヶ月間の平均値を下限値に、算定基準日の株価を上限値としただけ。こんなの小学生でもYahoo! Financeを見れば出来るわな。チャートなんか挿んで枚数を増やしているが、こんなもの要らん。

「類似会社比較法による算定結果」には、EBITDA、修正純利益、株主資本の3つについて「マルチプル」が並んでおり、採用類似会社も明らかにされてはいるものの、肝心のMultiplierの算出過程については何も書かれていないので、結局は出てきた値を信じるしかない。

「DCF法による算定」に至っては、WACCと実効税率しか載っかっていない有様。「予測損益計算書」も「予測貸借対照表」も資本コストも(CAPMを採用していたとして)β値も何もない。

「ネット有利子負債は、2006年9月末時点の『有利子負債+未積立退職給付債務等-(現預金+有価証券+非事業用資産)』で計算しております。」とあるが、負債コストを計るにあたって資産を引いてしまうのは、やり方としてそれでいいのだろうか。現預金や有価証券のように利息や配当を生むものは差し引いても構わない、というのであれば資本コストを図るときにも同じことをしなければならないのでは? また、そうであれば非事業用資産まで控除する必要はない。

結局のところ、算出過程を逐一追えるようでない限り、何も分からないのでちっとも参考とはならない。内閣府令も添付を義務付けただけで、記載事項までは規定していないのであろうから、仕方ないと言えば仕方ないものの、これでは新株予約権を出すときにBlack-Sholes Modelでやりましたぁ、なんて書いて値段だけ載っけとくのと何ら変わらない。

つまらん。

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