一般的にみてTOBに応じることなく、事後の簡易合併手続き(簡易株式交換手続きでも同様)における株式買取請求権の行使による是正が考えられるわけでありますが、しかし株式買取請求紛争の実態を考えますと、カネボウ株主の方のブログを拝見しておりましても、鑑定費用に莫大な費用がかかるところでありますし、(私も読ませていただき、ビックリいたしました)とうてい一般の株主が予納できるようなものではありません。
MBOルールの形成過程を考える – ビジネス法務の部屋
その鑑定費用って一体どれくらい?
リンクがないので勝手に探したんだけど、おそらくこれ。
会社法では「買取請求権」の存在が少数株主保護の金科玉条とされています。しかし、実際に行使するとなると、訴訟費用は過大で、個人株主にとって容易に行使できるものではありません。例えばカネボウの場合、裁判所から鑑定費用として株主側に2500万円もの予納を要求されています。
えええええ!? こりゃ法外。カネボウの騒動は興味がなかったので全く知らなかったよ…。
かつては市場で値段がついていたのに、何でこんなにかかるのよ!? 裁判所が要求したって書いてあるから、これは裁判所の判断ってこと? さっさと案件を処理してしまいたいが故の嫌がらせではないかとさえ思えてくる。鑑定って、結局Due Diligenceに近い作業になるわけでしょ? M&Aだのなんだのを扱ってる法律事務所の連中が普段これくらい稼いでるってことなのかなぁ。株価の分らない未上場の会社に対して、欲の皮の突っ張ったそこの経営者が勝手に決めた値段に合わせてDCF使って値段をでっちあげてる阿漕なコンサルだって、この1/10くらいしか請求してないと思うんだけど…。
ついでに以下の部分も勉強になった(想像したことがなかったんで)。
買収者側が用意したTOBに応じた場合と異なり、TOBを拒否して会社法上の買取請求を行なった場合にはみなし配当課税(所得税法25条)がかけられます。この税制のせいで、TOB価格は明らかに安いと考えても税金面を考えるとTOBにやむをえず応じる、との判断に誘導されがちです。
あー…。TOBなら譲渡だけど、買取請求は資本の払い戻しだからね…。
やってらんないね、まったく。
いま、少数株主のサイドから考えられることといえば、今後のファンド資本主義の更なる台頭、日本の株式市場が国際的に活性化することが予想されるなかで、こういったルールをきちんと形成することにもファンドが寄与することが、将来的な投資コストの低減につながる、といったことを認識していただくことと、裁判所に向けては、このままだと肝っ玉のすわった少数株主なら株式買取請求で満足できる余地はあるけれども、「やったもん勝ち」の世界でビビッてしまって、強圧的なTOBで満足せざるをえない株主は救済されず、ひいては市場への参加者は限定的に終わってしまうこと、それは最終的には一般国民にとって法による支配が及ばない領域を作ってしまうことにつながることの是非を問い、できるだけ鑑定費用や訴訟負担をかけずに効率的なMBOか否かを判定できる裁判手続の実現(もしくは工夫。たとえば鑑定費用をかけずに、手続きの公正さだけを争うことで、立証責任のバランスをはかり、相対的な決議無効を争えるような形として、その後は当事者間における和解的解決で決着をつけるとか。)をお願いすることが必要ではないか、と思います。
そうだよなぁ…。