The groanworthy lead: “For a company that pledged to not be evil, Google makes a lot of enemies.”
The menace of Google – Valleywag
エントリのタイトルだが、せっかく「menace」という単語を使うのであれば、Star Warsに引っ掛けて「The Google Menace」にしておけば?という気もするが、英語表現としては不適切なのであろうか。それはともかく、内容はGoogleの脅威に慄く人たちに関するSan Francisco Chronicleの記事についてである。当の記事はそこそこの量があるが、最後に要約があるのでそこだけ読んでも大意は掴める。
Wary of Internet giant
Google’s long tentacles have many running scared:
Silicon Valley: Concerned that Google’s outsize ambition is squashing startups and raising salaries in the tech industry.
Madison Avenue: Fears that Google is taking over the advertising business and making established ad agencies irrelevant.
Hollywood: Takes umbrage at widespread piracy on Google’s YouTube video service, claiming it violates copyright law.
Privacy advocates: Worry that Google’s collection of personal information will create a massive database that can be mined by government.
WHO’S AFRAID OF GOOGLE? – SFGate.com
要するに、Silicon Valleyでは業界の給与水準を上昇させて他のstartupの成長を阻害し、Madison Avenueから広告の仕事を奪い、Hollywoodでは著作権問題から目の敵とされ、集積した個人情報が政府に悪用される危険が指摘されている、ってな具合の内容で、まとまってはいるが特に目新しい問題はない。いずれの問題も知らなかったとしたら、あなたはアンテナが折れている。
その脅威の元となっている、Googleの現状を綴った簡単なデータも付記されている。
In less than a decade, Google has become a corporate colossus. Here are some examples of its muscle:
12,238 Number of employees.
$10.6 billion Revenue in 2006.
$3.1 billion Profit in 2006.
53.7 percent Share of the U.S. search market.
528 million Global unique users in March.
$143.5 billion Market capitalization.
$461.47 Share price.
Source: Google, Chronicle research
WHO’S AFRAID OF GOOGLE? – SFGate.com
GoogleはSilicon Valleyのstartupの脅威となっているか? 優秀なGeekを高給で搔っ攫っているというのはその通りなのであろう。サービスの面においてもGoogle productsに並んでいる項目と競合する企業は大変であると思われる。しかし、何から何まで自社で開発を行う訳ではなくてstartupを買収することもあり、それがWeb 2.0時代のBusiness Modelとなっているのだから、逆にStartupを支援している面もあるのではないか。
広告業界に与える影響としては53.7%という圧倒的なシェアに加えて、更に他メディアへの進出を図っていることを考えればこれは明らか。著作権問題は法廷闘争によって個別に決着をつけていくことでいずれ結果は見えてくるのであろうが、その一方で根底にあるユーザーの志向については、より深く考えていかなければならないのかもしれない。
Privacyは個々のユーザーに直結した問題だ。Googleは時の政権に協力的か? 中国を見れば明らかだ。我々はSeach Engineを利用することによって趣味嗜好を明らかにし、GMailで個人情報を、Financeで資産情報を、Codeでスキルを、Docs & Spreadsheetsで業務内容をGoogleに晒している。
じゃー使わなきゃいいじゃん。Googleでないと絶対に探せない情報なんてどれくらいあるの? 大抵のものは他のSeach Engineでも検索可能ではないのか。GMailなんか止めてPOPに戻せばいいじゃん(でもHDDにデータを残すならキンタマ・ウィルスとかには気をつけよう)。Day Traderたちはもとから取引証券会社のサービスやその他のソフトを使っていたことであろう。Code? 本読めよ。仕事はせっかく導入したんだからOfficeかOpen Officeでしなよ。今のところDocs & Spreadsheetsより強力だろ。
しかし現実にはそういう選択肢はあまり現実味を帯びてこない。Redmondに住む、いつまで経ってもファッション・センスが上がらないあの大金持ちだって昔から散々Evil、Evilとイビられていたが、その割にシェアは大して減らなかった。マスゴミにいる連中の給料が高すぎる? じゃあ新聞もテレビを見るの止めなよ。広告効果がなくなれば連中は失業だぜ。でもみんな見てる。
“This is an emergent business with lots of different choices,” Schmidt said. “End users have choices, advertisers have choices.”
WHO’S AFRAID OF GOOGLE? – SFGate.com
Schmidtの言う通り、それは我々の選択に掛っているのだが、理屈はそうであってもある方向に動き出した社会の趨勢は簡単にはひっくり返らない。Googleが生まれたとき、それはまだ積極的にNetを活用している連中のみに愛用された唯の検索サービスだった。しかし、Overtureのアイデアを採り入れることによって広告収入を大幅に伸ばして上場した時その名は決定的なものとなり、今もその膨大な資金力を背景に次々とサービスを拡大してプレゼンスを高めている。
Googleの脅威はその収益性の高さによるところが大きい。何故あんなに儲かっているのか? Keywordを競りによって釣り上げる仕組みがあるからだ。では広告主は何故そんな高いコストを負担してまでGoogleにすり寄るのか。高い広告効果が見込まれるからだ。何故、効果が高いのか。それはみんながGoogleを利用するからだ。結局のところ、Googleを支えているのは我々ユーザーなのであって、考えて見れば企業という社会的な存在である以上それは当然のことだ。
さて世界の東の果てに、西洋の道具は喜んで採り入れるくせにその精神は頑固に独自のものを堅持し続けるちょっと変わった国がある。この国では未だにYahoo!という前世紀のポータル・サービスが主流であって、そのためかKeywordの値段は米国の1/10であるという。大抵の人はモッチーというチンドン屋が内容も厚さも薄っぺらい本を書くまでGoogleが何をやっているかもよく知らなかったし、興味もなかった。今でもそのような人は多い。
2000年の歴史を誇るこの国の人々は保守的で、高々数百年ほど前に目的地を間違えて漂着した土地の人間を殺しまくって国を作ったばかりのアメリカ人とは違い、何かあると直ぐに新しいものに飛びつくほど腰が軽くない。変化は常にゆっくりと進行していく。システマティックなものが好きではないので、PCも世間の流行に合わせて机の上に置いてはみたものの、大した使い方はしていない。人々はもっと手軽で同胞との接触度が高いものを好み、そのせいか携帯はあっという間に国民の間に普及した。
ネットも価格比較のような実用的なものは使うが、それ以外はさっぱり儲からないので、ITを看板にしていても経営者は他業種の買収や不正会計に血眼となっている。競争が嫌いで仲良く売上をぐるぐると回しっこしたりする。アメリカの真似をして安易な市場を作ってはみたが、あまりにひどいその実態が明らかになるにつれ、刹那的な株価の上がり下がりになけなしの財産をはたいていた連中も今では見向きもしなくなってしまった。
最近ではblogとかいうものも輸入してはみたものの、使い方が分らず「後で読む」とお茶を濁して放置している。これを積極的に活用しているのはチェックするだけで思考が停止しているU35と呼ばれる連中だが、「女らしいからしくないか」だの「飲み会に行くか行かないか」だの「努力するかしないか」だのといった若者特有のイカくさい幼稚な青春の悩みをくねくねとぶつけあうだけで、議論そのものはいつも一向に収斂せず結論が出たためしがないので、彼の国では個人bloggerが大メディアに交じって堂々とWhite Houseに出入りしていることを知っている人たちは皆「ハテナ?」と首を傾げている。
閉鎖的なこの国の人々にとってInternetは広すぎる。小さな島の中で仲良くやっていければそれでいいのであって、海の向こうの国などに関心はない。戦争好きのアメリカ人のやってることなんかにもさして興味はない。アメリカ以外の国なんか、いつもいちゃもんをつけてくる特定の国以外は関心すらない。幕末の英雄たちの活躍により植民地化を免れたため、幸いにもCurryを発明した人たちのように英語を押しつけられることもなく、結果としてSilicon Valleyから電話番や下請けの仕事が入ってきたりしないので鎖国気分で楽園を謳歌している。そもそも日本でシリコン・バレーと言えば豊胸手術をした女性の胸の谷間のことである。
そういった具合だからSNSのような閉じたサービスは大好きだ。身内だけで仲良しごっこが出来るところがいい。頭のおかしい外国人がいきなり「らき☆すたッテナンデスカ?」などと話しかけてくることもない。周囲を海に囲まれた狭い国の中だけで平和的に愛し合ったり殺しあったりしてきた国民性にぴったりである。あまりにも楽しそうなので、(関東では)総合テレビと教育テレビの狭間にいる友達の少ない人たちが嫉妬して乗っ取りを図ろうとしたり、平和的な性質が災いして情報の恐ろしさを忘れた迂闊な人に時おり不幸が舞い降りたりしてはいるものの、全体としてはまだまだ高成長の道を辿っている。
この国の人々はわけもなく性善説を絶対視し、全ての人にそれを強要し、そうでない者は徹底的に排除する。外資系企業は須くこの特異な国民性をよく研究すべきであって、それを怠った者は必ず失敗する。他方、排除した者は視界から消え失せるので、一般の目が届きにくい金融市場などではやりたい放題である。
Japanese is not afraid of Google, only doesn’t know it very well.
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